Copyright © Koishi Seianjo. All Rights Reserved.

あんこの原料、小豆は、古くから私たち日本人に親しまれてきた食材のひとつです。しかも、いろいろな栄養素に富むことがわかってきました。 そこで、もっと知って、おいしく、ヘルシーに食べたい小豆とあんこの豆知識をご紹介します。

中国原産、いまは北海道で生産

 小豆は東アジア(中国南西部〜インドシナ〜ヒマラヤ南麓)原産といわれるマメ科の植物で、その名の由来には諸説あるようです。栽培には、日中は日が当たり、夜は冷えこむという寒暖の差のある土地が適していますが、低温や連作に弱く、一般に生育期間が短いわりには手間のかかる作物といえます。現在、日本全体では数十種類にものぼる小豆が生産されており、国内生産の80%以上を北海道産が占め、その約半分が十勝地方産です。そのほか、東北、京都などでも栽培されています。

 農作物ゆえに、産地によって色や形、風味は異なるものの、基本的には、シワや割れがなく、色や粒が揃っていて光沢があり、ずっしりと実のつまったものが良質とされます。そういう小豆は煮詰めても煮くずれせず、おいしいあんこになるのです。ちなみに、製餡および和菓子業界では、小豆を「ショウズ」とも呼びます。

赤に秘密がある小豆の歴史

 日本人と小豆の関わりは古く、『古事記』や『日本書紀』にその名が初めて登場していることなどから、すでに8世紀には栽培されていたよ うです。

 古来、中国、朝鮮、日本では、赤は太陽や火、血を象徴する生命の色で、魔よけの力があると信じられていました。その赤に近い色をしている小豆は、食べることによって邪気を払い、身を守ってくれると考えられていたのです。 そのため宮廷行事や儀式に使われたのをはじめ、さまざまな形で人々の暮らしに浸透していき、いまでも私たちの食習慣に残っているものもあります。例えば、小正月(1月15日)に小豆を入れた豆粥を食べるのは平安時代に中国から伝わった習慣で、同じく米と小豆を炊き込んだ赤飯をハレの日に用意することは江戸時代になって広まりました。

栄養豊富なヘルシー食品

小さなその粒の中に、さまざまな栄養素がバランスよく含まれている栄養の宝庫、小豆。毎日摂ることで健康維持が期待できるヘルシーな食品です。そのおもな成分と効果などを挙げてみます。

  • たんぱく質→小豆の主成分は炭水化物ですが、分量的には少ないながらも良質なたんぱく質も含んでいます。 そのたんぱく質を構成するのがアミノ酸で、なかでも人間の体内でつくれない種類の必須アミノ酸を含んでいるのが小豆の特徴です。

  • ビタミン→ビタミンB群が豊富で、糖質をエネルギーに変えるB1、皮膚の健康維持に必要なB2、B6に富んでいます。さらに、少量のビタミンEや葉酸も。

  • ミネラル→とくに食塩に含まれるナトリウムの排出を促すカリウムを多く含むので、高血圧やむくみの予防効果などが期待できます。また、鉄分も豊富で貧血や冷え性の改善に役立つとされています。

  • 食物繊維→小豆にはゴボウやワカメの数倍もの食物繊維が含まれています。大腸の働きを助け、便秘や大腸ガン予防に役立つといわれる不溶性食物繊維と、血中コレステロールや血糖値の上昇を抑える効果が期待できる水溶性食物繊維、双方とも豊富です。

  • ポリフェノール→大豆のイソフラボン、お茶のカテキン、赤ワインのアントシアニンなど、おもに植物に含まれる苦みや色素の成分のこと。これらは活性酸素を抑制し、抗酸化作用をもたらす働きが検証されてきたことから、生活習慣病や老化を予防する効果で知られるようになりました。とりわけ、小豆や金時豆に含まれるのはカテキングルコシドというポリフェノールで、高い抗酸化作用が報告されているほか、小豆の赤い皮に含まれるアントシアニンは赤ワインの1.5倍も多いとか。また、あんこをつくるために小豆に砂糖を加えると、メラノイジンという物質が生成され、これも抗酸化作用をもたらすといわれています。

  • サポニン→小豆の特有成分で、とくに煮汁に多く含まれるサポニンは、利尿作用があるほか、コレステロールや中性脂肪を抑える働きがあり、生活習慣病の予防に役立つといわれる栄養素です。

 これら小豆の健康効果について、昔の人は科学的知識はなくとも、経験上わかっていたに違いありません。だからこそ、お菓子に、料理に、小豆を多く利用してきたのでしょう。

江戸時代から、人々は甘いあんこに魅了されて

 小豆ばかりか、「あん」もいまから1400年前、大和時代に中国から渡ってきたといわれています。ただし、現在のような甘味のあんこではなく、当時は、米や小麦でつくった中華まんのようなものの中に詰める肉や野菜の具材のことを総じて「あん」と呼んでいました。

 その後、中身の肉類が小豆に代わって、室町〜安土桃山時代には、茶道が広まったり、かすていらや金平糖などのいわゆる南蛮菓子が盛んに輸入されたりと、だんだんお菓子を食べる習慣が人々の暮らしに定着していきます。それとともに、同じく渡来の白砂糖で味付けされた善哉(ぜんざい)が誕生。このあたりから小豆あんの製法なども進化し、江戸時代になるとあんの製法も味も、現在のものに近くなり、あんこを使った和菓子の種類もどんどん増えて、庶民でも手軽に味わえるようになっていきます。